【潜入】初開催のフェムテックセミナー&展示会レポート!働く女性の健康課題をみんなで考える。
女性の活躍推進や働き方改革が進む今、フェムテックという言葉を目にする機会が増えてきています。
フェムテックとは「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語のこと。月経や妊娠・出産、不妊、更年期など女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するサービスや製品を意味します。
女性特有の健康課題による労働損失等の経済損失は、社会全体で約3.4兆円と推計※されています。働く誰もが心身ともに健康であるために、フェムテックの活用が一助となる、と期待されているのです。
そんな中、J:COMでは、社内の有志の従業員メンバーが中心となり、フェムテックをテーマにした社内向けセミナー&展示会「J:COM meets Femtech!〜みんなで知ろう 女性が抱える健康課題〜」が初開催されました。
編集部がイベントに潜入し、当日の模様や企画担当者の声をお届けいたします。
【展示会】見て、触れて体感できる
日本未上陸の製品を含む、フェムテック、フェムケア製品や啓蒙コンテンツが展示され、生理や妊娠、更年期の悩みに関する製品のほか、男性の健康課題に寄り添うメンテック製品など約35のサービス・製品が展示されていました。
こちらは吸水ショーツ。多くのメーカーではクロッチ(吸収部)に抗菌性のある、吸水速乾素材を使用しており、水分を吸収しながらにおい等も抑えます。生理だけでなく尿もれや汗、おりものにも対応できるアイテムです。
月経カップ(サニタリーカップ)は、医療用シリコン製のカップを折りたたんで膣内に挿入し、経血をためて使用する生理用品。洗って繰り返し使用可能で、ナプキンやタンポンのようにゴミが出ないため、環境面や経済面でもメリットがあるのだそうです。
また経血の状態や、カップについた目盛りで経血量を確認でき、自分の身体の状態を知ることにも役立ちます。
製品は実際に見て触れて体感できるので、より理解も深まります。取材時も部署や年代を問わず多くの従業員が見学に訪れていました。
【セミナー】男女分け隔てなく、一緒によりよい働き方を考える
同会場では「自分自身や周囲がよりよく働くためのヒント」をテーマにしたセミナーも開催しました。講師を務めていただいたのは、今回のイベント全体にもご協力いただいているフェルマータの森本 将也さん。
「一つの組織として、性別を問わず、自分自身や周囲の健康課題と向き合い、一緒によりよい働き方を考えるきっかけにしていただけたらと思います」(森本さん)
セミナーでは、男女のホルモン値の違いとそれが心身に与える影響、生理、更年期などにまつわる女性の健康課題の実情と個人差について、図解を交えながらお話しいただきました。
それによると、生理や更年期などにまつわるホルモンバランスの乱れによる不調を抱えている女性従業員は全体の約8割にのぼり、うち約4割の女性従業員が「女性特有の健康不調時の仕事のパフォーマンスが通常時の6割に下がる」と感じていることがわかりました。
「多くの女性従業員が健康上の悩みを抱えています。職場においても、働きやすい環境の整備、そして女性特有の健康課題について相談・会話しやすい風土作りが求められています。
男性従業員や経営層の方々なども含めて、健康課題への 理解を深めることが重要です。 今回の事前アンケートの回答数は800名。そのうち、54%は男性社員からの回答で した 。社員のみなさんが性別を問わず女性の健康課題に対して高い関心を持っていることがうかがえます 」(森本さん)
また、参加した従業員からは以下のような声が寄せられました。
「フェムテックという言葉を 初めて知り 、商品も初めてみましたが、説明を受けて、世界には生理痛が軽減される製品があることを知りました。自分も 使ってみたいと思いました」(女性/技術部門)
「女性のみ入場可能の時間帯があったため、足を運びやすかったです。フェルマータの方がとても気さくに話しかけてくださったので、話しやすかったです。
フェムテックは月経、妊娠・出産の印象が強かったのですが、更年期などに関するものやメンテックの展示もあり、幅広く色々な製品があることが分かりました」(女性/技術部門)
【企画担当者インタビュー】女性の健康課題に向き合う。社内有志が企画した初のイベント
――はじめに、今回のイベントを開催した理由を教えてください。
楠畑:J:COMで働く私たちにとって、女性の健康課題に向き合うことは、性別を問わず自分たちの働きやすさ、よりよく生きることにつながると考えたからです。
私のまわりでも、同僚の女性がPMS(月経前症候群)の症状で出社できなかったことや、家族が婦人科系の疾患で手術をしたことがあり、テクノロジーの力で症状が緩和されたり、疾患の早期発見につながったりするのではないか、と考えイベントを企画していきました。
大村:フェムテック、フェムケア製品や市場を知ってもらうだけでなく、自身や家族、同僚や上司・部下の健康に向き合うきっかけづくりにしてほしいという想いで社内の有志12名が企画・運営に携わりました。
また、社内のウェルビーイング実現はもちろん、参加者からの「使いたい」「使ってもらいたい」という声を拾うことで、事業機会を考える場にしたいと考えました。
このイベントをきっかけに、自社にとどまらず働くすべての人に情報を届けていけたらいいなと思っています。
――お二人は普段、どのようなお仕事を担当しているのでしょうか?
大村:技術部門での生成AI活用検討・PoC(概念実証)開発、技術戦略の中長期ロードマップ作成などを進めています。
楠畑:私は技術サポート本部 ヘッドエンド運用部で、ヘッドエンドの運用・管理、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用した業務効率化などを担当しています。
――お二人が今回のプロジェクト運営に参加した理由は?
楠畑:私自身、更年期が気になる世代のひとりです。アロマテラピーが趣味なのですが、女性特有の悩みにもアロマを取り入れることがあり、そこからフェムテックを知りました。
女性特有の悩みはさまざまありますが、我慢しながら仕事をしている方も少なくありません。このようなテーマを社内に向けて発信することで、女性がもっと生き生きと活躍できる風土が生まれてほしい。そういう想いを込めました。
大村:私も体調の揺らぎが仕事に影響して、精神的な辛さを感じたことがありました。心身の悩みはセンシティブなので、周囲に話せず一人で抱え込んでしまいがちです。そういう方に向けて「社内にも同じ悩みを抱えている仲間がいるんだよ」というメッセージが伝わったら嬉しいです。
また、女性の健康課題について、女性だけの話題と捉えるのではなく、広くジブンゴト化してほしいという想いがありました。男性従業員にも積極的にイベントに参加してもらい、知ってもらうことで、一緒に考えるきっかけづくりになればと思いました。
――今回のイベントを振り返っていかがですか?
大村:「開催してよかった!」が率直な感想です。参加者は110名で女性の割合が多かったのですが、中には札幌から来てくれたメンバーもいました。男女ともに「参加してよかった」という感想をいただき、手応えを感じています。
楠畑:イベントは1日限り、業務時間中の開催だったので、「在宅勤務で会場に行けなかった」「仕事で外に出ていた」という方もたくさんいました。セミナーは後日アーカイブ映像を社内に配信予定です。ぜひこの機会に広く知ってもらえたらと思います。
女性の部下を持つ男性従業員も多く、女性のパートナーやお子さんを持つ方も当然たくさんいます。女性の健康課題を“自分ごと”としてアンテナを張り、知見を深めていただく機会になったのではないでしょうか。
――プロジェクトを進めるうえで印象的だったことは?
大村:企画メンバーとは毎週、定例会議を開催して議論を重ねました。多様なバックグラウンドを持つメンバーからの意見は大変興味深く、私たちにとっても学びの多い展示会&セミナーになったと思います。
楠畑:普段、接する機会の少ない他部署のメンバーと意見を交わせたのは新鮮な経験でした。また、私たち従業員がボトムアップで企画して、実現できる風土があるのは、J:COMの魅力の一つだと改めて感じました。
――今回の経験が本業に活かせることはありますか?
楠畑:部署ではメンバーの出勤状況を日々確認していますが、周囲からは気付きにくい不調も多くあります。仕事を進める上でも、今まで以上に相手を思いやりながら、悩みを気軽に話しやすい環境を作っていきたいと思います。
大村:私が所属する技術部門は、男性従業員の割合が圧倒的に多く、私のチームも女性は一人です。悩みを抱える女性が社内にたくさんいるということを発信できて、少し肩の荷が降りた気がします。
――最後に、今後実現したいことを教えてください。
大村:「女性が多いと入りにくい」と感じる方もまだまだいらっしゃるので、次回以降、男性対象のセミナーなども開催したら面白そうですね。社内の技術センターからも「開催してほしい」と要望がありました。今回の振り返りを活かして、他部署や全国の拠点でも取り組みを広げていきたいです。
楠畑:今回は、まず女性の健康課題を認識してもらうこと、フェムテックについて知ってもらうことが目的でした。一人ひとりが働きやすい環境の実現に向けて、今後もこのような学びの機会は継続していきたいと思います。
▼イベントに参加いただいた伊藤千晃さんのインタビュー記事はこちら
フェムテックを学ぶことが、働きやすさにつながる? 伊藤千晃さんと考える、これからのウェルビーイング | CINRA