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【震災伝承】災害の記憶を”未来”へつなぐ

J:COMは安心・安全で輝き続ける街づくりのために、災害からの学びや教訓を次世代につなぐ「伝承活動」が重要であると考え、映像としてアーカイブ化する取り組みを続けています。震災伝承の連携組織「3.11 メモリアルネットワーク」と協働して東日本大震災の語り部の活動を中心に『震災アーカイブ「未来へつなぐ 語り部の声」』と題して映像化し、J:COM の特設サイト等で公開しています。
 
なぜ、J:COMが東日本大震災の伝承活動を記録するのか、経緯や想いについて、プロジェクト担当の西嶋さんに話を聞きました。


西嶋 麻凜
2015年入社。サステナビリティ推進部。「震災アーカイブ」のプロジェクト担当。ライフワークは女性アイドルの推し活。




伝承することの大切さを知って


——「震災アーカイブ」とはどのような活動なのでしょうか

東日本大震災の記憶を風化させないこと、復興への思いを被災した方々と共有することを目的に「震災アーカイブ」と題し震災に関連する映像作品を配信しています。東北のケーブルテレビ会社が制作したドキュメンタリー作品や、J:COMが制作した東北で語り部活動をおこなう方々の映像『未来へつなぐ 語り部の声』を、特設サイトおよびビデオオンデマンドサービス(J:COM STREAM)でお届けし、一部の作品は「募金オンデマンド」として有料配信して視聴料を復興支援団体へ寄付しています。
 
ドキュメンタリー作品の配信と視聴料の寄付は2015年末から、語り部活動の映像化は2021年から継続しています。
 

——どうして、J:COMがこの活動を続けているのでしょうか。
 
地域に根差したメディアとして、震災の記憶を蓄積し、伝え続けていくことが私たちの使命だと思うからです。
 
J:COMは東日本大震災の直後から、情報の発信や支援物資の送付、募金などを通して復興支援活動を進めていましたが、震災から5年を迎えたタイミングで、次の段階として私たちができること・すべきことを考えた結果、“震災の記憶や教訓を風化させることなく、次世代に伝えていくこと”をテーマに定め、「震災アーカイブ」と題して映像配信の取り組みを始めました。
 
さらに活動を進める中で東北の語り部の方々に出会い、震災から時が経つにつれて世の中の関心が低くなっていること、コロナ禍により伝承活動の継続が難しくなっている現状を知りました。語り部の方々の活動が私たちの目的にまさにぴったりな内容であると感じ、2021年から語り部活動の映像を制作・発信しています。
 
東北の語り部の方々の伝承活動に焦点を当てた映像を全国にお伝えすることで、コロナ禍で活動の継続が難しい語り部活動への一助になれば、そして各地の防災・減災意識を醸成し、安心・安全な街づくりにつながれば、という想いから企画しました。
 

——なぜ「伝承」だったのでしょうか。
 
メディアの会社として「伝える」ことを通して、地域の方々の役に立ちたいという想いがありましたが、個人的に「伝承:伝え、受け継いでいくこと」を意識したきっかけの一つとしては幼少期からの経験があると思います。
 
私は広島県出身でして、小さい頃から戦争を体験した語り部の方々のお話を聞く機会が多くありました。また、祖父母も戦争の体験者で、辛い記憶を話してくれることもありました。戦争を実際に経験した方が語るありのままの言葉が深く心に刺さり、後世に伝えないといけない教訓があること、忘れてはいけない記憶が確かにあることを強く感じる原体験となりました。災害と戦争で伝えていくメッセージの内容は異なりますが、子どもの頃に感じた「伝承」の重要性は、この企画を進めていくにあたって大きなポイントになりました。


語り部の方々の熱量をそのままに


—— 語り部映像を制作・配信する中でどのような点に力を入れましたか?

 
語り部の方々の活動を、記録として忠実に残す、というコンセプトの下、いかにして「忠実に」再現・収録するか、に注力しています。
 
語り部の方々は、普段対面でお話をされる機会が多いそうですが、収録となると固くなってしまったり、淡々とした絵になってしまい、熱い想いが伝わりにくかったりすることがあります。映像でも熱量がそのまま伝わるように再現したいと思い、普段の講話の様子に加え、インタビュー形式で活動されるきっかけとなった出来事をお聞きしたり、語り部の方々が大切にされている現地の風景や、実際に案内している場所等も映像に収めたりすることで、語り部の方々が活動に至る背景も正しく伝えられるように意識して構成しています。
 
この企画で協働している3.11メモリアルネットワークの皆さまは、語り部の方々の普段の活動をよくご存じの為、そういった「忠実さ」の部分についても様々なご意見をいただきました。多くの方の力をお借りしながら制作した映像です。語り部の方々の熱意が、映像からしっかりと伝わることを願っています。

現地の風景とともに収録
現地を訪れ、語り部の方と語らいながら


「こんなこともあったんだ」で終わらせない


——語り部活動の映像化は4年目を迎えますが、手ごたえはどうですか。
 

目に見えてわかりやすい結果がでる活動ではないので、手ごたえというと難しいのですが、「アーカイブ」の名の通り、語り部映像が着々と蓄積されていて、2024年3月現在で15本まで増えました。まだまだ活動の途中ですがここまで来たか、という達成感はあります。

これまで映像を制作した語り部の方から、「J:COMさんの映像をきっかけに連絡をくれた人がいた」というお話をお聞きしたり、学校の防災教育の場で映像を活用している、といった声をいただいたりした際には、このプロジェクトが少しでも役に立てているのかな、とうれしく感じました。

また、2023年は関東大震災から100年という節目であったので、関東大震災の伝承も映像制作しました。東北以外の教訓もお伝えすることで、東北以外の地域のみなさまにもご覧いただけるきっかけになればと思っています。


——西嶋さんはどのような想いでこの活動を続けていますか? 

コロナ禍の中で、被災地や伝承施設に足を運ぶ人が減ってしまい、リアルの場で伝承活動を続けることが難しくなってしまった時期がありました。

そんな時、語り部映像のように現地にいかなくても、タイミングや場所を選ばずに被災者の声を伝え、受け継ぐことができるのは大きな意義があると思っています。

東日本大震災から13年が経過しようとしていますが、当時の震災を知らない世代も増えてきましたし、震災直後に比べて世の中の関心も薄れてきているかと思います。まずは私たちの映像を入口として、改めて震災の恐ろしさや防災・減災の大切さを考えていただきたいです。

そして映像を見た方々に「へーこんなこともあったんだ」では終わらせず、自分事化して捉えていただき、自分の身に災害が起きた際、教訓を元に行動できる方が一人でも増えることを願っています。

 

災害はいつどこで起こるかわからないから


—— 今後の展望を聞かせてください。

2024年1月に能登半島の地震が発生し、「災害はいつどこで起こるかわからない」ということを改めて実感しました。

「津波てんでんこ(津波が来たら自分の命は自分で守る)」の教えなどが東北の方々の命を救ったように、語り部の方々の教訓や経験談がいつか誰かの命を守ることに繋がればと願っています。

一人でも多くの方に興味を持ってもらい、語り部の方々の言葉や想いを届けられるよう、この活動を知ってもらうための取り組みも強化したいと思っています。リアルイベントを開催したり、他団体・企業とコラボレーションしたりできたらと思い、今まさに企画を考えているところです。また、現在は東日本大震災を中心にして活動していますが、他の災害からの教訓の伝承にもさらに範囲を広げていきたいと考えています。

♪本日のBGM♪ 
Dear your heart - アップアップガールズ(2)
このBGMを聞きながら読むといいかも♪という音楽を勝手におすすめしています。

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